無職失業体験談

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お金のかからない世界

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更新日:
投稿者:赤いネコ

もう10年ほど前の事だ。 私が25歳の頃、仕事を辞めた。

理由はまあ、よくある人間関係というヤツで、当時設計会社に勤めていた自分は、そこのカミナリ親父的な老設計職人の罵声に耐えきれず、退職届を出したのである。

気持ち程度の引き留めはあったものの、退職届け自体はそれなりにトントン拍子に受理されて、晴れて私は無職となった。

とにかくカミナリ親父の理不尽な罵声と周囲を取り巻く人間関係に疲れ切っていたので、しばらくゆっくりしよう……と思ったわけだが、仕事を辞めたから収入がない。

たまたま自宅住まいだったから家賃その他は何とかなるとして、問題なのは暇である。

お金の掛かる遊びは出来ないからカラオケやボーリングというわけにもいかないし、失業保険のポイント稼ぎ程度にハローワークに足を運んでも、なかなかこれだといった仕事は見つからない(そもそもすぐに働く気もあまりなかったのだが)。

その頃は図書館も家からかなり離れた所にあったし、当時の私は車も持っていなかったから、その辺をダラダラドライブするというわけにもいかない。

自転車も職場近くの駅に置いたままで、当時は正直職場の近所に行く事さえイヤだったので、結局そのままにしてしまっていた。 仕方ないから、家に帰る。

ネットの回線とPCやゲーム機は仕事をしている間にきっちり揃えていたから……始めるのは、ネットゲームである。 当時は確か、PS2のFF11だったか。

今でこそアイテム課金のゲーム全盛だが、FF11は利用料月額固定というそれなりに良心的なゲームで、月額二千円しないくらいでやりたい放題である。

これがカラオケだと一時間いくら、釣りなどでも餌代や道具代が掛かってしまうが、ネットは既に引いているし、PS2版なので追加投資も必要ない。

当時使っていたADSLの通信料だけはかかってしまうが、もともとネット中毒だった自分にとってはネトゲをしてもしなくても、金額に差が出るわけでもない。

結局、幸い暇だけはあるからと、一日の大半をゲームの世界で過ごすようになった。

人間関係に疲れた自分が、ネット回線の向こうにいる他人とパーティを組んではモンスターを退治しているのだから変な話なのだが、ゲームでの協力プレイやそこでの他愛ない雑談は仕事のしがらみとは無縁のもの。

幸いにも職場関係のネトゲ仲間はいなかったから、そこで遊んでいた時間は非常に癒やされるものだった。

モンスターを狩り、フィールドをうろつき、ゲーム内通貨を稼ぎ(リアル通貨は稼いでないくせに!)アップデートでの改善や改悪にネットのゲーム仲間と一喜一憂する。

そんな日々が半年ほど続き、失業保険の給付金も給付が終わり、人間関係による心の傷も癒えた頃、ようやく自分は新しい仕事を見つける事が出来た。

新しい仕事は土日出勤が基本の不定期な仕事で、人集めが必須なイベントをクリアする事が難しくなってしまったため、FF11からは結局離れてしまったが……。

あの頃の思い出は10年たった今でも心の中に思い出として残っている。

最高の暇潰しと、癒やしの手段として。